Q and A
〜ふわっと空中に浮いたときのこと、おぼえてませんか?〜 バックナンバーはこちら
聞き手:『わたしのグランパ』ホームページ編集部
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 <第5回>
Q ついに公開されましたね、『わたしのグランパ』。お客さんの入りはどうですか?
  大ヒットとまではいかないけど、宣伝部もがんばったから、今後のクチコミ次第でしょう。毎日新聞の批評(4月4日夕刊)もすごかったしね、「秀作」なんて書いてくれて。
Q 原作とくらべて、原作どおりだという人もいるし、大分違うという人もいます。
  あのね、いちいち原作と比較されても困るんです、ぼくは原作をなぞって「動く紙芝居」を作ったわけじゃないんだから。
Q そのとおりだと思います。でも、原作にはない、あのイスが飛ぶシーンが……。
  「イス」は飛びません。イスに縛りつけられたまま「珠子」が空中を飛ぶんです。
Q あのシーンの意味がわからないという人が、わたしの友だちにもいるんですけど……。
  友だちじゃなくて、あなた自身でしょ、よくわからないという人は……。
Q ええっと、まあその……。
  さびしいな。やっぱり、忘れたのかなあ。
Q え? なにをですか?
  今いくつですか、あなたは。
Q 24歳です。
  今から11年前、13歳のとき、ふわっと空中に浮いたときのこと、おぼえてません?
Q えっ? そんな……。
  実は、日本の女性は13歳のとき、一度だけ「空中浮揚」することがあるんです(笑)。
Q ……?
  ただ、目撃者がほとんどいないのと、飛んだ本人がすぐに忘れるので話題にされないだけなんです。考えてみてよ。頭の後ろの方にかすかな記憶が残ってないかな? ふわっと空中に浮かんだ、13歳のある日のこと……。
Q うーん、なんだか……。
  思い出して!
Q なんか、そんなことがあったような……。
  ……気がするでしょう(笑)。みんなが忘れてる女性の13歳、思春期のある日のことを、この映画がはじめて描いた、というだけのことです(笑)。べつに「意味」なんてない。
ちょっとしたマジック・リアリズムです。
Q 「マジック・リアリズム」?
  イリュージョン(幻影)でもいい。もともと映画に「ファンタジー映画」とか「リアリズム映画」なんて区別はないんです。映画はみなファンタジーで、イリュージョンです。
Q ……なんか、また小むずかしくなりそう。
  だってさ、そもそもこの「一問一答」だってイリュージョンだものね。聞き手としてのあなたは実在するわけじゃなくて、ぼくが作ったイリュージョンだったわけだし……。
Q ああ、とうとうバラしちゃった! そんなことするんなら、もう消えちゃいますからね、どうせわたしは「イリュージョン」で「幻影」なんだから!
  ちょっと待って! まだ話が……。ああ、 飛んでっちゃった、13歳じゃないのに……。
(編集部註・この5回連続「監督との一問一答」は、〈ふだんから仲良しの24歳の女性〉という、架空のインタビュアーを想定して、監督自身が書き下ろしたものです)
Q and A 監督との一問一答
第1回 〜 大まじめに描かれた現代の「おとぎ話」なんだ 〜
第2回 〜 現代の最高級の音楽じゃないと… 〜
第3回 〜 監督がキャメラマンを選ぶ基準 〜
第4回 〜 悩んでいるうち、ふと思い出したのが足利市だった… 〜
第5回 〜 ふわっと空中に浮いたときのこと、おぼえてませんか? 〜
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