INTRODUCTION
愛すること、命を繋いでいくこと、自然との調和の中で生きること― 見失っていた大切なことを、この海が教えてくれた。 わたしたちの遠い記憶を呼び覚ますような、静かなファンタジーが 12年の時を経て生まれた。 お腹に新しい命を抱え、果てしない不安に押しつぶされそうになりながら彷徨っていた“はる”は、 何かに導かれるように迷い込んだ、小さな島の入り江で不思議な老人たちと、一人の若い女性に出会う。 鏡のように穏やかな海。眩しい五月の緑。手をのばせば届きそうな星たち。 皆で口ずさむ懐かしい歌。穏やかな静けさの中で、“はる”は命のはじまりの不思議を知る。 愛すること。命を繋いでいくこと。自然との調和の中で生きること。 見失ってしまっていた大切なことを、教えてくれたのはこの海だった。 12年前、一人の少女が天草の海と出会い、感じた強いインスピレーション。 それは次第に人々に伝播し、やがて小さな島の大きな願いをはらんで、一本の映画になった。 監督・脚本は山本草介。佐藤真、東陽一、ペドロ・コスタの演出助手を経て、 デビュー作となる本作で瑞々しい感性を煌めかせる。 また脚本・イメージ設計を新進気鋭のアーティスト、海津研が手がける。 そして“はる”をつとめた玉井夕海こそ、長い年月をかけてこの物語を育んできた、いつかの少女。 『千と千尋の神隠し』でリン役をつとめた彼女は、本作では主演の他、脚本、音楽を手がけている。 私たちの遠い記憶を呼び覚ますような、静かなファンタジーが生まれました。
STORY
お腹に新しい命を抱えた“はる”は、目に見えない何かに引き寄せられるようにして、入り江の小さな島にたどり着く。 その島には、数人の老人たちと、“ちい”という若い女性が暮らしていた。“ちい”の閉ざされた態度に戸惑いながらも、 “はる”はお節介な老人たちと数日を過ごすことになる。それぞれに小さな舟でここに辿り着いたという老人たちは、 毎日人型の泥人形を作ってはどこかへ“出荷”する日々を過ごしているのだった。 そんな中、“はる”と前後して島にやってきた“作一”という老人が謎の女“ちい”と再会する。 “ちい”は“作一”の元妻で、あるショックから自ら歳をとることを止めてしまっていたのだった。 やがて、“作一”の記憶の包容力と“はる”の新しい命への希望がひとつになり、星々のめぐりがそのスピードを取り戻し、 “ちい”の凍てついた時間を融かし始めるのだった。
