天草を舞台にした映画を撮る、と人に話すと、よく聞かれることがある。
「天草の出身ですか?」
しかしながら僕は東京生まれの東京育ち、親戚にも天草に由来のある人は見あたらない。
そしてもう一つ。
台本を読んで僕に出会った人には必ず助監督と間違われ、
自己紹介をすると「お若い方なんですね」と驚いた顔をされる。
これは映画のテーマと僕の年齢がどうも合わないということだろう。
通常映画は監督の体験がリアリズムをもたらすものだから。
そんな映画を作るにあたって、僕には一つだけ誓ったことがある。
それは、わからないことをわかったふりはしないということだ。
大きな船が空から降ってきたり、時間の止まった人が出てきたり、
とにかく現実にはあり得ないことばかりの物語なのだが、僕は決して嘘はつかないということを決めた。
セリフを書いたことは書いたのだけど、実際、八十五歳にもなろうとする人の本当のところはわからない。
だから、出演していただいた方の言葉に直してもらった。奇妙なシチュエーションだけを作りあげ、そこに生きる人達の言葉は演じる本人のものとした。
僕は主人公はると共に、彼らの言葉を傍らで聞いていて、カメラを回す。
それを繋いでこの映画はできあがったのだ。
結果、主人公はるの旅は、僕の旅でもあった。
その時感じた空気が少しでも画面から匂っていれば、それほどうれしいことはない。
監督・脚本 山本草介
