石巻×デブ少年×元ヤン少女

「オイ達、アホでいいんだって」ほのかなユーモアが心に刺さる、
新鋭・庄司輝秋が被災した故郷を舞台に描く、異色の傑作短編。



「自分はひとりじゃない」そう感じられる瞬間があったなら、生きることは少し楽になる。

無職、元ヤン、嘘ばっかの少女・弘恵(韓英恵)と赤いランドセルのデブ少年・達利(篠田涼也)。なんの接点もないはずの2人は“のけもの同士”妙に気が合う。何をするわけでもなく、ささやかないたずらに興じる彼ら。そんなある日、弘恵は達利が妹を交通事故で亡くしていたことを知る。悪気なく「長浜の海で形見を燃やせば命が甦る」と嘘をついてしまう弘恵。それは彼女が誰かのためについた、はじめての嘘。達利はその嘘を信じ、弘恵はその儀式を行おうと決心する。ずっとひとりだった弘恵と達利。孤独と戸惑いを抱えていても、誰かがそばいてくれれば、“嘘”だって“希望”に変わる。

「死」と「希望」の間でもがき続ける、被災した若者たちの姿を、石巻出身の新鋭・庄司輝秋が叙情的に描く。

人は死ぬ。時に緩やかに、時に突然に。病気で、事故で、震災で。
死を弔う術も知らず取り残されている、そんな少年と少女が「自分たちなりの希望」を見つけようともがく様をシリアスさだけでなく、あたたかみとおかしみを交えて描いたのは、石巻出身の新鋭・庄司輝秋。
本作で監督デビューとなる彼もまた、実家が津波の被害にあっている。3.11以降、幾度となく訪れた故郷。そこには「絆」や「復興」、「頑張ろう」といった言葉では語れない、報道やドキュメントからこぼれ落ちる、ささやかな日常の営みと静かな戸惑いがあった。
喪失を引きずったまま、押しつけられた希望をもてあましている人がいる。かつての希望とはなんだったのか、呆然としている人がいる。
震災から2年。被災した街で生きることが日常となりつつある故郷を舞台に、そこで暮らす人々の戸惑いと孤独にそっと寄り添う物語を紡ぎあげた。
本作は被災地を舞台にしていても、語られる物語は直接的に震災を描いているわけではない。いかに希望をもって生きるのか、という普遍のテーマを、映画という表現を通して、切実に訴えかける。

◉本作品は、若手映画作家を支援し日本映画の活性化を目指す文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト」で完成した映画です。

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