
今なお踏みにじられた真実、冤罪事件を追う
1990
90分
製作:シグロ
監督:小池 征人
企画:中央狭山闘争本部、部落解放同盟中央本部
製作:山上 徹二郎
撮影:大津 幸四郎
音楽:坂田 明
被差別部落の出身だから
女子高校生を殺して身代金を要求した埼玉県狭山市でおこった事件の犯人として石川 一雄さんが逮捕され、27年の月日が流れた。彼が犯人とされた原因の一つは、被差別部落の出身者だからだった。
無実を訴えて
石川さんは、無実を訴え、長年その実証への努力をつづけている。関係者のインタビューや脅迫状の検証を通じて、この映画は改めて客観的に狭山事件を追う。監督は、『人間の街』で大阪の部落の人びとを生き生きと描いた小池 征人。
冒頭に石川さんの事件当時の写真と最近の写真が映される。時の流れが胸にこたえる。
狭山も今では東京のベッドタウンと化し、当時の面影はない。その間ずっと石川さんは拘束されてきたのだ。
映画では本当に石川さんが脅迫状を書いたのかどうか筆跡を照合するほか、当時の石川さんの雇い主や同僚たちの証言を集める。とくに特別捜査本部の責任者だった元部長へのインタビューは、新たな証拠となるほど逮捕の状況を露わにしている。

今後の“闘い”
また、犯人と決めつけられた背景に、石川さんが被差別部落出身者だったことがいかに大きかったかを、家族や取材にあたった記者の証言が語る。石川さんの友人はあまりの取り調べのきつさに自殺すら考えたという。そして、当時、警察は「吉展ちゃん事件」で犯人を取り逃し面子をつぶされ犯人逮捕を焦っていたことも明らかにされる。
無実を信じていた石川さんの両親はすでに亡き人となった。石川さんの兄・六造さんが今後の“闘い”について静かに語る姿が印象的だ。