ガイサンシーとその姉妹たち

ガイサンシーとその姉妹たち
母は真夜中に夢をみる。その夢は彼女が若い頃にあったこと。

2007
80分

製作:班 忠義、シグロ
監督:班 忠義
撮影:班 忠義
製作:山上 徹二郎
編集:甘 文輝、ジャン・ユンカーマン
音楽演奏:盂県民間楽隊

監督のことば

1992年東京のある集会で、日中戦争当時旧日本軍から性暴力を受けたという中国人女性の証言と身体に残された傷跡に、私は衝撃を受けた。ある日本人残留婦人との出会いから戦争問題に関心を持ってきた私は、95年国会での 「不戦決議」の戦争認識に危機感を持ち、日中戦争の事実を知るため山西省の黄土高原に広がる貧しい農村に足を踏み入れた。しかし私の会いたかった「蓋山西(ガイサンシー)」と呼ばれた女性は、すでに自ら命を絶ってこの世を去っていた。

それから10年、毎年山西省を訪れ、蓋山西と同じように性暴力を受けた女性達と関わっていく過程で、当時の体験を思い出す恐怖でときに体を震わせながら、彼女達は一生懸命カメラを通して私に訴えはじめた。戦後も半世紀以上差別や貧困、病気、恐怖のために明らかに出来なかった自らの過去に彼女達ははじめて向き合い、怒り、悲しみ、悔しさを語った。その後取材を通して出会った元日本兵は、加害の事実にある方は淡々と、ある方は悔悟の涙を流して向き合ってくれた。

戦争体験を伝えること、国を越えてそれを共有することは、戦後60年も過ぎて難しいことだ。しかしだからこそ二度と悲惨な戦争を繰り返さないために、想像力を持ってお互いに歴史に向き合う、平和を守ろうとする人達とその協同作業を一緒にしていくのが、20年近く日中を行き来してきた私に出来る事だと思っている。