酔いがさめたら、うちに帰ろう。

やっとみつけた、どん底での希望。
それは“心の居場所(うち)”に帰ること。

2010
118分

製作:シグロ、バップ、ビターズ・エンド
監督:東 陽一
原作:鴨志田 穣
脚本・編集:東 陽一
出演:浅野 忠信、永作 博美 ほか

  • 第23回 東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門オープニング
  • 第20回 日本映画批評家大賞 監督賞

解説

「来週は素面(しらふ)で家族と会うのです。きっとです。」…と言いながら、ウォッカを飲み気絶した戦場カメラマンの塚原 安行。足早に駆けつけ「大丈夫。まだ死なないよ」と、 彼の頬をさする人気漫画家の園田 由紀。ふたりは結婚し、子供にも恵まれたが、安行のアルコール依存症が原因で離婚していた。10回の吐血、入院、暴力… 断酒できず、自身も家族も疲れ果て、安行は嫌々ながらもアルコール病棟に入院する。しかし、そこでの風変わりな入院患者たちとの生活や、個性的な医者との 会話は不思議と安堵感を与えてくれたのだった。すべてを受け入れる妻の覚悟と、家族の深い愛情に支えられ、体力も心も次第に回復してゆくが、安行の体はもうひとつの大きな病気をかかえていた…。自分の弱さと向き合うことで、やっと見つけた、どん底での希望。それは、信頼の絆で結ばれた家族のもとに、“心の居場所(うち)”に帰ることだった。家族が一緒に生きる意味を、私たちに教えてくれる感動作がここに完成しました。

物語

「来週は素面で家族と会うのです」と言いながらウォッカを飲み、血を吐いて気絶した戦場カメラマンの塚原 安行。母・弘子は慌てつつも、慣れた様子で救急車を呼び、救急隊員に掛かり付けの病院を伝えている。その場に駆け込んできた、売れっ子漫画家の園田 由紀が、「大丈夫、まだ死なないよ」と安行の頬をさすった。ふたりは結婚し、子供にも恵まれたが、安行のアルコール依存症が原因で離婚し、今は別々に暮らしている。安行は病院に運ばれ、そのまま3ヶ月の入院になった。それは10回目の吐血だった。

知り合いの医師を訪れ、アルコール依存症について尋ねる由紀。医者は身を乗り出し「ほかの病気と決定的に違う一番の特徴…それは、ほかの病気と違い、世の中の誰もほんとうには同情してくれないことです。場合によっては医者さえも」と言った。その言葉は由紀の胸に深く突き刺ささる。

退院後、抗酒剤を服用し禁酒している安行は、穏やかな日々を過ごしていた。そんな時に、一人でふらっと入った寿司屋で出された奈良漬け。「酒じゃないから大丈夫か」とパクリ…。数分後、安行はコンビニの酒棚に直行していた。気がつくと、酔っ払って転倒し頭から血が流れていた。「ああ…奈良漬け…」意識がかすんでいく。

後日、タクシーに乗りある場所に到着した安行と弘子。驚いている安行をその場に残し、「ここは精神病院。あなたは入院するんです」と言って弘子は足早に中へと入ってゆく。嫌々ながら入院したアルコール病棟だったが、ここでの風変わりだけど憎めない入院患者たちとの生活や、個性的な医者との会話は不思議な安堵感を与えてくれた。

体力も心も回復に向かっているかに見えた安行だったが、その体にはもうひとつの大きな病気をかかえていた…。