
いま医療の現場で何が起きているのか
2025
77分
監督:山本草介
企画:安全保障関連法に反対する医療・介護・福祉関係者の会
製作:シグロ
プロデューサー:山上徹二郎
撮影:山本草介、辻智彦、伊東尚輝
撮影助手:小林沙優
整音:永濱清
カラーグレーディング:辻智彦
音楽:田中教順
編集協力・パンフレット制作:世良田律子
宣伝デザイン:秋山京子
©2025 SIGLO
作品詳細
私たち そして医療従事者たちが知らなければならない真実がある
現在の日本の医療現場が抱える様々な問題の根底には、第二次世界大戦における医療関係者による戦争犯罪への加担と、その隠蔽という事実がある。石井四郎が率いた「731部隊」に所属する医師たちは、中国人への人体実験を繰り返し、敗戦後その事実を隠蔽しただけでなく、人体実験で得た“知見”を自らの功績にかえ、戦後日本の医学界の中心に上り詰めた。
そうした負の歴史と向き合い、「医の倫理」を掲げて戦争反対の声を上げ続ける医療関係者たちがいる。
本作では、731部隊の真実を追いながら、現在の医療現場が抱える様々な問題に取り組む医療関係者たちの今を取材した。
企画者の言葉
今もなお、残虐な形で多くの市民が殺されているのにもかかわらず、現代の世界はそれを止めることができないという事実。
2013年に秘密保護法、2014年に防衛装備移転三原則、2015年に安全保障関連法、2017年に共謀罪の創設、そして沖縄で、日本の各地で、米軍だけでなく自衛隊のミサイル基地が、弾薬庫が、着々と新たに作られている。多くの人々が、戦争に備える必要性を受け入れ始めているようにもみえる。
戦争に備えることは、国策に動員され戦争に加担していく過程であったことを歴史から学ばなければならない。とりわけ医療者は戦争に真っ先に動員される。ナチスドイツに匹敵する日本の医療者による戦争犯罪の事実は、医療者さえも詳らかには知っていない。医療者が戦争に加担した歴史が、戦後アメリカとの密約のもと覆い隠されたまま戦後の医療界は形作られてきたからだ。
戦後80年の節目に、映画でインタビューに応じてくれた各人からの共通のメッセージ、「戦争に備えるのではなく、医療者は戦争を起こさないことに全力をあげるべき」を届けたい。
「倫理は法よりも高い基準の行為を要求し、ときには、医師に非倫理的行為を求める法には従わないことを要求します」。これは世界医師会の『倫理マニュアル』にある一文。「戦争を起こさないこと」はもちろん、「悪法には従わないこと」、それは容易なことではない。それでもなお、医の倫理にこそ従うべきであることが、真に医療者に問われている。
伊藤真美(安全保障関連法に反対する医療介護・福祉関係者の会)
監督の言葉
「医」と「戦争」。これほどかけ離れたものはないだろう。命を救うのが「医」であり、命を奪うのが「戦争」だからだ。僕はこの映画を撮影するまで、当然「医」に携わるものは「戦争」に抗い、否定するものだと思っていた。だが、現実はそうではなかった。過去に医療者は実験と称した大量殺人さえし、現在も、反戦運動に関わるものは少数であり、職場では異端とされる。なぜなのだろう?医療者がどれだけ努力を重ねて一人の命を繋いでも、一生かけて新しい治療法を開発しても、戦争が起これば
すべてが無に帰すのに。僕は退院する元患者を見送る医療者の笑顔を知っている。それが心から生まれたものであると知っている。力及ばなかった時の苦悩も見ている。
しかし、だからこそ、この映画を世に出す必要があると思った。彼らに見てもらう必要があると思った。そして私たちの命への「倫理」そのものが脆く、いとも簡単に失われることを、僕はこの映画を作り、知った。
山本草介